2018年、台風により関西国際空港が浸水し、その後台風の経路上にあった兵庫県各地が高潮で浸水する被害を受けました。

中でも注目されたのが、芦屋市の南端にある芦屋浜の住宅地の浸水でした。

ここはそれまで「絶対に浸水しない地区」として行政によって造成され、販売されてきた土地でした。それが今回、完全に期待をうらぎられる結果となりました。

これは浦安にも同じことが言えます。

松崎前市長時代には、浦安は絶対に大丈夫だと何度も言明されていたにもかかわらず、昨年11月には千葉県により「浦安市はほぼ全域が浸水する」という調査結果が報告されたのです。

今回のレポートでは、芦屋市の被害状況やその後の行政の対応策を調査し、その結果を踏まえて浦安としていまやらなければならないことについて考察してみたいと思います。

 

 

芦屋浜の位置関係や護岸

芦屋は神戸と大阪のちょうど真ん中あたりに位置します。その南端のリゾートタウンとして造成されたのが芦屋浜です。

芦屋浜の中には温泉やライフガーデン、豪華な戸建、さらにはハーバーやハーバー付き別荘があります。

夏には人工ビーチで花火大会もあり、何もなければ最高のオーシャンリゾートタウンでありました。

そして、臨海地区の戸建エリアということで、行政も防潮堤の整備には念を入れているつもりでした。

ご覧の通り、一番波の影響を受ける南側の護岸は5.1mで設計されています。地盤沈下の影響もあり、実測値としては5mちょうどくらいの高さとなっています。

このような護岸が整備されていたにもかかわらず、台風で高潮が護岸を易々と超えてしまったのです。

 

台風による被害状況

これまでの行政の試算ではこの高さがあれば波が護岸を超えることはない、と試算されていました。

しかし台風後の兵庫県のまとめによると以下のような被害が出てしまいました。

データにやると東京湾海面+3.53mであったにもかかわらず、実際は5mの護岸を易々と波が超えたことになります。

これは台風による吸い上げ効果と、風による波の最大値の増幅が重なった結果です。

水の力で鉄柵も簡単に折れています。

一方で、階段防潮堤の形状であったので、圧力は分散され、建物への床下浸水はあったものの、建物自体の破壊に繋がるような圧力を受けることがなかった点も特筆すべき点でしょう。

階段状の護岸の有効性が証明されたとも言えます。当日の水の流れは以下の図のようになります。

上記のように水は南側の護岸を超えて、ハーバー側に流れ落ちて行きました。浸水自体は数時間で引き、被害としては外構の汚れやエアコンの室外機、車、と言ったものであり、家自体の損傷はありませんでした。

街はすぐに元の平静を取り戻しました。

ご覧の通り、今は街の中は完全に元どおりです。

ある程度の高さの護岸があり、かつ頑丈な階段状護岸であったことが、被害を最小限に食い止めたと言えます。

 

その後の芦屋浜への行政の対応

とはいえ、絶対に大丈夫と言われていた浸水被害がいざ発生し、行政側も大幅な見直しをせざるを得なくなりました。

まず浸水ハザードマップを見直し、今のままであると浸水するという予測に変えました。これを住民説明会にて説明をすると当然行政への大批判になります。土地を作って売ったのはそもそも行政ですから。

そこで兵庫県と芦屋市は、すぐさま改善計画を策定し、それも併せて公表することにしました。このスピード感は千葉県や浦安市も見習わなければなりません。

(以下、行政からの住民説明内容)

ご覧の通り、兵庫県と芦屋市は2019年から護岸の嵩上げを行うことを住民にコミットしたわけです。

市民、県民の財産を守る為に、またそもそもこの土地は行政が作って売却したという責任ある立場からすれば必須の対応ではありますが、このように迅速に対応してもらえることは有難いことでしょう。

 

浦安が今すぐに対応しなければならないこと

浦安では幸いまだ同様の被害は発生してはいません。しかしながら、ご覧の通り、浦安市の護岸は特に三番瀬側は芦屋に比べて貧弱です。

A.P.は荒川水準なので、東京湾水準のT.P.にするとA.Pから1.13mを引くことになります。

そうすると入船付近の護岸は4.5m、日の出も5m程度しか高さが無いことになります。

すなわち、芦屋浜の状況に極めて酷似しており、同じような台風が来れば、必ず浦安市も海水で浸水することが予見されます。

加えて、芦屋のように水の逃げ場がない為、海水の浸水もなかなか引かず新町北部や中町では大規模な被害が発生することが想定されます。

2018年11月の千葉県が更新した浸水ハザードマップは以下の通りです。

 

ご覧の通り新町から元町に向かって水が流れ込み、それを逃がすための標高がないために大規模な被害となることが想定されます。

税金投入には常に限界がありやれる事にも限りはありますが、今は県は三番瀬護岸の実態調査しか出来ておらず、市としては県に要望することしかしておらず、果たしてこのままで本当に良いのでしょうか。

県としては広い県土を有しており、浦安だけに投資ができないことは仕方ありません。そんな中でも、自民党のリーダーシップのもと、三番瀬護岸の調査開始や第二湾岸の建設により避難路の確保を推進して頂いているのは大変ありがたいことです。

しかしながら、市としても、県に頼む以外にも独自に出来ることはまだまだあるのではないでしょうか。

例えば、神戸市では、景観を守りつつ、街を守るための「海の見える防潮堤」の整備を独自に進めています。

実際過去の台風ではこの防潮堤のおかげで重要施設が守られています。

加えて臨海部には、それでも波が超えてしまった場合の避難場所を設置しています。

以上の通り、神戸市の取り組みを見れば、浦安市単独でもできること、やるべきことがたくさんあるように思います。

三番瀬の施設もあの小さな建物に2億円もの費用をかけています。しかしながら、用途は限定的(市民団体への倉庫提供など)であり、税金投入効果がどれほどなのかは大変疑問であります。そもそも市民、周辺住民に希望やヒアリング、説明会などを実施しないで施設を作っている時点で謎です。

しかし、もしこの施設ももう少し考え方をスケールさせていて、災害対策の避難場所等としての機能と、地域創生の場として機能を持たせていれば、浦安市で徐々に内側に独自の護岸を整備するまでの市民の命を守る砦になったかもしれません。

そしてそこで稼いだ収入で少しでも防災インフラ整備に回すことができます。

今そこにある危機です。待った無しの状況です。浦安市の生命と財産を守る為に、政策を総点検して積極的に予算を組み替えて行って頂けたらと願っています。

民間資金の活用は、収入を生まない防災インフラの予算を生み出すための有効な手段です。

例えば、総合公園に避難場所の機能も持つ大規模な民間運営、民間建設、民間設計の商業施設の整備をして、そこで得た不動産収入で防災インフラの整備を進めるといったような新しい仕組みを作ることができるリーダーが浦安には必要です。

次の選挙の政策でも、各会派からどのような政策が打ち出されるか、非常に重要な分岐点に来ています。

水害対策には県議時代から熱心でおられた内田市長ですから、きっと次の市長選に向けて、実効性のある計画をご提示頂けるのではないかと思います。

それを踏まえた市議選のマニュフェスト作りにもなって行くことでしょう。