統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)という概念

マーケターは、長い間、顧客に対して標準化された製品を販売するマス・マーケティングを展開してきた。それにより、テレビを中心としたマスメディアを利用した効果的なコミニケーションのノウハウが進歩した。




大企業は定期的に何億〜何十億円もする巨額の広告用テレビや新聞等に費やし、いちどの広告で何千万人もの顧客にアプローチしようとした。しかし、SNSなどの新しいメディアが誕生した現在ではこの顧客とのコミュニケーションの領域において新たな問題に直面している。

顧客は多様な情報源から発信される広告にさらされているが情報源などいちいち区別しない。顧客にとっては、どのメディアを使っていようが、どのプロモーション手法をとっていようが、すべて企業に関するメッセージの一部 でしかない。したがって、さまざまな情報源からのメッセージが矛盾すると、ブランド・ポジションに対する顧客の混乱へと結びついてしまう。

広告は、通常は広告宣伝部門か広告会社において創造される。直接の人対人の販売によるコミュニケー ションは営業部門が展開する。その他、各部門のスペシャリストが責任を持ち、 PRや販売促進イベントを遂行している。これら複数の情報源からの多様なコミュニケーションによって、顧客のブランド認知をぼやかしてしまう危険を孕んでいる。

今日、多くの企業が統合型マーケティング・コミュニケーション(IMC) という概念を採用するようになってきた。これは企業内のコミュニケーション・ツールを慎重に統合し、説得力のあるメッセージを伝えようとする企業活動である。

統合型マーケティング・コミュニケーションでは 顧客が企業およびブランドと接触するであろうすべ てのタッチポイントを認識しなければならない。そして、すべてのタッチポイントにおいて、前向きで印象の良いメッセージを伝えなければならない。 テレビ広告にも印刷広告にも、メールや人的販売によるコ ミュニケーションと同じメッセージを持たせなければならない。もちろん各メディアが、それぞれの特性に従って独自の役割を果たすということも必要ではあるが、各メディアの役割は発信される前に十分に調整されなればならない。

巧みに統合されたマーケティング・コミュニケーション活動の良い事例が、バーガーキングの「ワッパー・フリークアウト」キャンペーンである。

バーガーキングの看板商品「ワッパー」の誕生50周年を祝って、アメリカで特別なキャンペーンが実施された。

もし突然ワッパーがメニューから永遠に消えたら、という設定でいくつかの店舗でメニューからワッパーを消し、隠しカメラを使ってショックを受けた顧客の様子を撮影した。

そして、テレビやラジオ、新聞、雑誌のスポット広告で、その様子を伝えた。

「私たちは1 日だけワッパーの販売を中止し、何が起こるか調べるドッキリです」と、広告は始まった。そして、続きはネットで、と実験の概要を動画で確認できるウェブサイトへと消費者を導く。

この動画はユーチューブにもアップされ、十数人の顧客がまずは唖然とし、怒りに満ちた反応が映し出されていた。バーガーキングはいくつかの人気サイトにもバナー広告を置き、このキャンペーンを広めた。

顧客も自作パロディをユーチュープにアップして、キャンペーンを盛り上げた。その結果、このキャンペーンはバーガーキング創業以来の記憶に残るものとなり、開始後わずか3ヶ月で視聴回数は400万に達した。
このキャンペーンのおかげで、来店者数も増加し、ワッパーの売上は29%の伸びを示した。 最近では、企業においてマーケティングコミュニケーション専門の役員を配置し、責任の明確化とプロセスの強化が図られるケースも増えてきている。



浦安のシティプロモーションについて

浦安でも1億円以上の費用を投じてシティプロモーション動画を作り、配信をしている。

丁度2017年3月で、上記のワッパーと同じく3ヶ月が経つが、視聴回数は7460回しかない。言葉を選ばずに言えば大失敗だ。

然しながら、浦安が大好きな私たちは、この動画を何回も見てしまう。動画そのものは市民にとってはほっこりと感じるなかなか魅力的なものなのだ。では何が問題だったのだろうか。

問題の本質について考えてみると、動画の中身ではなく、まさに上記のIMCの概念の欠如と、そもそものマーケティング戦略という概念の欠如であったと分析している。

まず問題点①として、この動画は誰に対して発信をしているのか、すなわちSTPの設定がなされていない。京葉線の中でも放映していたが、浦安の街中の様子を流しても関心を持つのは、そもそも関心を持つ人だけだ。例えばアフリカの都市の定食屋の動画が流れていても、そこの出身者以外は誰も見ないだろう。

シティプロモーションでは、すでに浦安に住んでいる人が関心を持っても意味がない。浦安に住んでいない人に対して、浦安の魅力をアピールしないといけないという基本概念が、このプロモーション企画には欠如しているように思う。

そして問題点②としては、IMCの概念が欠如しており、ワッパー事例のような動画視聴への誘引が出来ていない。京葉線の鉄道広告で動画の一部を流していたが、そこから先を見たい!と消費者に思わせる仕掛けはなかった。

動画自体はほのぼのした良い仕上がりになっているが、マーケティングの概念がないために、税金の無駄遣いとなってしまったように思う。

市の行政において本気でシティプロモーションを行う方針であれば、マーケティングの専門部署をつくり、実業界からマーケティングのプロフェッショナルを起用することを浦安市ではやるべきではないだろうか。

一方で、このようにあとから批判するのは簡単で、誰でもできる。実際に成功させるのは難しい。

私達市民の有志一同は浦安のために尽くす気持ちを持つ人はたくさんいる。もっと市民に広く情報を開示し、市民と一緒に新しい市政が執り行われ官民一体の新しい浦安創りが出来たらと思う。