昔は地域活性化の箱物建設といえば、全て自治体・行政が費用も負担し、デザインや運営も自治体が行うという方法しか取れませんでした。

その結果として、やはり街づくりや商業のプロではない行政主導のプロジェクトはうまくいかないケースもあり、特に人口の少ない地方ではダメージの大きいものでした。

しかし、最近では関連する法律の改正により、ここに民間の資金とノウハウを投入することができるようになり、大規模な税金の投入をすることなしに、地域の人々が喜ぶ賑わいの場、憩いの場を創出できるスキームが実行可能となっています。

 

愛知県有料道路

日本初の有料道路PFIですが、それまでは全額県の運営でした。

しかし前田建設と大和ハウス連合による民間運営が行われるようになってから、税金を1円も投下することなく、サービスエリアも昨年全面リニューアルが行われ、地域向けのイベントなども多数開催されています。

(出所:愛知県道路コンセッション株)

隈研吾さんのデザインです。

仙台空港、高松空港

これらは国管理空港ですが、それぞれ前田建設と三菱地所による運営が始まっています。

行政が運営していた時代には殺風景な空港でしたが、民間が運営するようになると人を呼び込み、収益を上げるための改修が行われるようになります。

(出所:仙台空港)

もちろん投資は全て民間負担です。

そして公園も官民連携ができるように

最近まで法律の壁で民間を活躍しにくかった公園ですが、ようやくこちらも法改正が行われ、全国各地で官民連携の公園活性化が行われる事例が多数発生しています。

東京都ではすでにご紹介した通り多数の成功事例があります。

最近では名古屋の公園が、この制度を使って三井不動産によって大幅に改修されることが確定しました。

公園の維持はこれまで通り税金ですが、ここでのポイントは上記に明記されている通り、大きな費用がかかる箱物の整備は民間の費用で行われる、ということです。

どれだけ税金負担を減らす提案なのか?は必ず事業者選定の際の大きな配点ポイントになっています。

加えて、案件によってはそれによって大きな増収があった場合にはレベニューシェアが行われるスキームが採用されています。もしくは、最初に運営権対価が設定されるため、分割払いで行政は大きな税収を得ることができます。

その際たる事例は福岡空港です。

こちらも民間運営にかわり、「PortからParkへ」というコンセプトで大幅にリニューアルが進められています。

国としては1610億円であれば元が取れるという試算でしたが、最終的な価格は4500億円でした。

この上澄み利益を使って、行政にしかできない福祉とか災害対策とか、社会基盤整備への資金を捻出することが可能になります。

 

浦安はどうすべきか?

翻って浦安に目を向けると、いま以下のような整備が進められています。

この建設には億円単位の税金が投入されています。(国からの社会資本整備交付金も活用しているのではないかと思いますので、全額市税ではないかもしれませんが。)

もし、この建設に他の自治体や国のような官民連携の新しいスキームで取り組むことができたとしたら、出来上がりの姿も、街への効果も、税金負担額も大幅に変わったのではないかと感じています。

世界の革新を生み出すシリコンバレーは「失敗を恐れずに新しいことにチャレンジする」ことが評価される社会です。

そうでないとイノベーションが起きないからです。

失敗の中から試行錯誤で新しいイノベーションが生まれます。

税金で、原っぱと遊具だけの普通の公園を作れば、批判されることはあまりないかもしれません。

しかしそのままだと街の活性化にはつながらず、街は縮小均衡に陥ってしまいます。

今必要なのは街の継続的発展のために、新しいスキームにチャレンジすることではないかと思います。

「失敗を恐れるべきではない」とは、大規模な税金の損失のことではありません。

これまで何度もお伝えしている通り、税金は使わないで如何に大きな実を得るか、ということがPFIの趣旨であり、私達が目指すべきことです。

官民連携のスキームであれば、失敗とは言っても、民間の応募者が出てこずスキーム設計にかかるコンサル費用が無駄になるくらいの話で、あの小さな三番瀬の施設でさえ数億円をかけていることに比べれば、はるかに小さな金額です。

もし三番瀬も最初からこのスキームを使っていれば、この2億円の税金は福祉に回すことができたかもしれません。

また、運営開始後のリスクですが、関空の台風事例でもご覧の通り、大規模なリスクが発生した時は行政がすぐに介入して、解決することが出来るように、土地や施設の売却ではなく、「コンセッション」の方式がとられています。

万一採算が取れずに撤退する場合でも、通常のPFIでは違約金を払い、更地にして返すという条項が入っており、行政からすれば取組前の元に戻るだけです。

浦安市では民間にリスクを取ってもらう官民連携方式は初めての取り組みになるので、大規模な損失になるのではないか?と心配されているのかもしれませんが、実は市にとってのリスクは上記の通り限定的です。むしろ税金で箱物を作る方が危ないでしょう。

日の出にできる子供図書館計画ですが、そう言った視点で考えると、新しい取り組みのチャンスになるかもしれません(図書館法は改正されていないので、別の建て付けにしないといけませんが)

(注: 但し、こういうリスクを民間に寄せたスキームが機能するのはマーケット環境がよく、投資性資金が民間に潤沢にある時期になります。今後のマーケットの不安定感を考えると、今やらないと、次にウィンドウがあくのは何年も先になってしまうかもしれません。)

浦安の発展のため、そう言った新しい取り組みにチャレンジしていがなければならないターニングポイントにきていると感じています。

そして、新しいスキームで生まれた10億円単位の予算枠を使って、新しい若い人達が浦安に住みたいと思ってもらえるような子育て支援や、街中の防犯カメラ設置による安全の確保、災害対策、高齢者福祉など、収入は生まないが社会に絶対に必要なものを拡充していく好循環を作らないといけません。このままでは必ず税収は減少し、賄えなくなっていき、公共福祉は改悪せざるを得なくなってしまい、浦安の魅力が落ちてさらに税収が減るという悪循環の恐れがあります。

健全な今だからこそ、新しい持続的なスキームを作っていく必要があると考えます。