ディズニーとUSJに関して、以下のようなニュースが報道されている。
まずはじめに、この記事を執筆するにあたり、どちらのパークも大ファンであり、どちらかに肩入れするという趣旨はない点はご理解をいただきたい。それでは日経の記事を見てみよう。
ディズニーとUSJに関する報道
国内二大テーマパークの2016年度通期の入場者数が3日、出そろった。オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市、TDR)は昨年4月に実施した値上げが響き、前年度比0.6%減の3000万人と2年連続で前年実績を下回った。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪市、USJ)は新型コースターの導入や15周年イベントの効果があり、前年度比約5%増の1460万人で過去最高を更新した。(日経)
東京ディズニーランド・ディズニーシー(千葉県浦安市)とユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)について、それぞれの運営会社が3日、平成28年度の入場者数を発表した。USJは3年連続で過去最高の1460万人。合計で3千万人だった東京ディズニーランド・ディズニーシーの半数の1500万人まで目前となり、悲願の「ディズニー超え」が現実味を帯びてきた。
テーマパークのビジネスはある意味とても分かりやすく、売上は来客数(業界ではアテンダンスと呼ぶ)x客単価(業界ではper capと呼ぶ)で決まる。
客単価とはチケット代+パーク内消費で確定する。そしてパーク内消費は、基本的にパーク内滞在時間で決まる。
確かにアテンダンスは売上に影響をあたえるのは事実だ。しかし、実は過去のUSJはアテンダンスを増やすために、大切なものを失う失策をしてしまい窮地に陥った。
2001〜2003年のアテンダンスの推移だけを見て欲しいのだが、これだけを見ると奇跡の大復活のように見える。しかしこれは格安(6900円)で年間パス「ハリウッドフレンドパス」を販売したことによる見せかけのアテンダンスであった。
格安なパスだからみんなこぞって買ってパークに来るが、客単価が激減し、減収になってしまった。その結果キャッシュフローが回らなくなり、2004年にゴールドマンサックスが救済に入ることになった。
2017年時点でゴールドマンの株は全てエグジットしているが、実は今再びUSJで似たようなことが発生している。ディズニーのパスが6万円近いのに対して、USJは2万円だ。さらに一日券を買った人は差額でパスが買えてしまうキャンペーンも行っていた。
つまり、アテンダンスは増える一方で、客単価は大幅に落ちることになる。
基本的に年間パスのお客様はいつでもパークに来れるという安心感からパーク内に長居はしないし、お土産も買わない。さらに客単価が下がる傾向を強めてしまう。
また、アテンダンスがパークのキャパシティを超えて増えすぎると、待ち時間が長期化し、顧客体験価値が大幅に悪化する。単価の高いワンデーチケットのお客様のリピート率を下げてしまうことになりかねない。
報道は単純にアテンダンス数で比較してディズニーはマイナスでUSJが勝っていると言ったトーンだが、テーマパーク経営はそんなに単純ではない。
我々の見立てでは現時点の顧客満足を維持できる各パークの容量は、ディズニーが2つあわせて3000万人、USJが1300万人だ。これを超えると顧客に混んでて不快な場所という悪印象を与えることになりかねない。
そういう意味で、両パーク共にこれ以上アテンダンスを増やすような施策に傾注すべきではないと思う。むしろアテンダンスの体験価値を高め、もう一度行きたい、もっとここに居たい、と思わせる取り組みに注力すべきである。
そういう意味で、ディズニーが2500億円かけて面積を拡大し、混雑を解消していくことはとても重要なことである。
USJもマリオランドの開設でキャパシティを増やすことは重要な一手である。
タイトルではディズニーvsUSJと書いたが、実際にこの2つのパークは競合はしない。500キロも離れており、明日はディズニーに行こうか、それともUSJに行こうかなどと悩む人はいないからだ。
むしろインバウンドなんかは東京-京都-大阪のゴールデンルートの旅において、両方のパークに行こうという相乗効果になるぐらいだ。
ディズニーもUSJも大切な日本の観光資源である。両者ともこれからも日本の観光業を引っ張るべく、正しい経営を続けて頂きたいと感じるし、メディアは変な煽り方はすべきでないと思う。