以前の記事で、
というタイトルにて、日本トイザらス株の外部への売却の可能性について考察を書かせて頂きました。
その後、日本トイザらスを含むアジア事業の売却が報道されました。
まずは各社の報道を見てみた上で、考察をしてみたいと思います。
Executive Summary
各社からのトイザらスに関する報道内容
報道各社からの案件の内容は以下の通りとなっています。
経営破綻した米玩具販売大手トイザラスが日本を含むアジア事業を10億ドル(約1070億円)超で売却する見通しとなったことが分かった。(出所: 時事通信社)
日本トイザらスの親会社、トイザらス・アジア(香港)は16日、米トイザラスが保有していた85%の株式が、米投資ファンドなどに譲渡されると発表した。昨年9月に米トイザラスが経営破綻(はたん)し、アジア事業の引受先を探していた。日本トイザらスも営業を続ける。複数の投資ファンドや金融機関でつくる「タージ・ノートホルダーズ」が約79%の株を取得。米トイザラスとともに株を持っていたファン・リテーリング(香港を拠点とする小売り大手)が株を買い増し、約21%を保有する。(出所:朝日新聞)
アジア事業全体をバルクで売却することになったようですね。
買収側が考えていることについて考える
まずこの記事を見て驚いたのはその金額です。
日本だけでも売上は1,500億円くらいあるはずなのに、アジア全体で1,070億円とはどれだけ破格なのでしょう。
逆に言えば、価格は下げてでも早期に売却したかったことが伺えます。
いわゆるバイアウトファンドは、以前は「ハゲタカ」などと揶揄されたものですが、こういうスペシャルシチュエーションを格好のビジネスチャンスと捉え、買いにきます。
そもそも本家がアマゾン等にディスラプトされてしまうビジネスのアジア部門です。欲しい人はあまりいないでしょう。買い手に交渉力があります。
然るに買収側に相当程度の交渉力があり、このような値段になってきたのではないかと推測しています。
買収価格についてですが、各事業のそれぞれの価値を足し合わせた時に、買収価格よりも大きければその買収はやるべき、という判断になります。例えば以前の三洋電気の買収もその典型的事例です。
トイザらスのアジア事業もおそらくはこの「sum of the parts」価格が、買収価格よりも大きかったため、買収者は購入しようと考えたのではないでしょうか。
一方で、報道によるとストラテジックであるファン・リテーリング社も株を買いました、とあります。
このことが示唆していることについて推察しましょう。
金融ファンドが投資後にまず最初に考えることは、
・事業の切り売り
・コストの徹底削減(含む人員や店舗の整理)
です。
これは基本的に被買収側に嫌われるので、その後ずっとグループ社として付き合いが続く戦略的投資家は好んではやりたくありません。
しかし金融PE系ファンドであれば、最後は必ず売却して利益を上げることを主業としていますから、気にせずリストラを断行します。ハゲタカと揶揄されるのはそれが理由でしょう。
今回のケースでは、リストラを金融ファンド主体で進め、それが完了した後にファン・リテーリング社に全株式を売却するというシナリオではないかと推察します。
トイザらス新浦安店はどうなるのか?
上記の仮説が正しければ、買収者が真っ先に行うであろう行為はリストラです。
企業の価値を高めて金融ファンドが売却エグジットするために、不採算店舗は真っ先にリストラを行うでしょう。
そう考えると、結局のところ、トイザらス新浦安店がどうなるかは、トイザらス新浦安の売上にかかっているといえます。
地域の人達が、このトイザらスで定期的に買い物をしているということであれば、新浦安トイザらスはこれからも残るでしょう。
しかし、もし、トイザらスには行くけれど、散歩ついででお買い物はしない・・ということであれば、厳しい未来が待っているかもしれません。
そして、2018/9にオープンしたニューコースト新浦安の中に、スタジオアリスは移転してしまいました。
これが、スターツ社による破格のテナント賃料の提示による顧客の奪取だったのか?、はたまた、トイザらス新浦安のリストラの一環によるテナント契約の解除によるものだったのか?は外部からは不明です。
しかし残り数年間の定期借地権契約の今、スタジオアリスが撤退するということは何か1つのメッセージを送っているように思えてなりません。
実際の地域の消費者ニーズに鑑みるとあの場所にこれからもトイザらスがあり続けるべきなのかは分からないところがあります。もっと有効活用する方法もあるようには思います。
ただ、いざ実際に無くなると思うと、悲しむ人も沢山いることでしょう。
トイザらス新浦安の底地は千葉県の所有だったと思います。そうなると、その後の浦安の都市の在り方に重要な影響を及ぼすこのトイザらスの在り方については、実は重要な政治の政策課題であると言えるかもしれません。
今年行われる選挙の争点の1つになってもおかしくない案件かもしれませんね。