2018年春よりおさんぽバスの新路線として「じゅんかい線」が開設されました。
今回はこの新しいバス施策について、経営的観点から考察をしてみたいと思います。
事業とは、当たり前ですが利益を確保し続けなければ継続は不可能です。そしてこの利益は、「利益=収入ー費用」という当たり前の方程式によって導かれます。
ではここで、おさんぽバスじゅんかい線事業について、収入、費用の両面から、現状の状況について考察をしてみたいと思います。
①路線コストについて
浦安市内のおさんぽバスには3路線あります。
医療センター線は、東京ベイ・浦安市川医療センターと新浦安駅間を片道約30分
舞浜線は、舞浜駅と新浦安駅間を片道約50分
じゅんかい線は、新浦安駅や市役所、日の出・明海・高洲地区を1周約80分
で運行をしています。じゅんかい線は一周して戻ってくるとは言え、内回りと外回りがありますので、路線長としては他路線と同じく2倍をする必要があります。こうしてみるとじゅんかい線が他路線に比べて路線が長く、20分間隔運行に必要な運行コストベースは高いものと思われます。
現在は9台前後のバスがじゅんかい線運用のために新規調達されています。
年間の事業費は、当初2億3,000万円と見積もられています。(これが浦安市負担分だけなのか、総額なのかは不明です。おそらく年間の運行経費で減価償却費や固定費は含まないと推察します。)
したがって、他路線よりも多くの収入を稼がなくては、税金による市民負担が重くのしかかってしまうことになります。
②収入(利用者数)について
まだ公式の数字は発表されていませんが、毎日乗客の様子を眺めていると、他のおさんぽバスとは違い、毎回数人から10人未満しか乗っていないような印象です。
正確な数字はベイシティ交通さんに確かめないと分かりませんが、ツイッターでも乗客がいないと利用者から呟かれています。
出所:ツイッター
出所:同じくツイッターのつぶやき
新浦安~日の出地区は一定の需要があるようですが、ここは実際にはこれまでのベイシティバスの利用者が運賃が安い、子供は無料、という理由で転移しているだけではないかという懸念があります。
そしてそれ以外の地区では片手で数えられる人数程度しかいつも利用されていないように見えます。スターツショッピングセンターの開業も決定し、これからさらに需要が減っていく恐れもあります。
今後、半年〜一年後に正確な乗車人数データが出てくるまでは真実は分かりませんが、実はかなりの赤字路線になっているのではないかと心配をしています。
先の2.3億円という年間コストを、365日、8バスで割り算すると、一日一台で7.9万円を稼ぐ必要があります。
つまり有償旅客を一日790人以上運ばなくては赤字となります。
さらに1日の運行時間である12時間で割ると、1時間あたり65人の輸送が必要です。
新浦安10人、市役所10人、東野10人、高洲5人、日の出5人くらいの有償旅客(無料の子供は除く)とすると40人くらいが現状から想定される有償旅客であり、赤字化している可能性があるかもしれません。
③じゅんかい線の経営状況に関する考察
以上を踏まえると、じゅんかい線の経営状況はもしかすると厳しい状況が想定されます。それはすなわち市民の税金負担による出血が続いている状況となります。
新規の航空路線であれば、マーケティングやツアーの開発によって新たに需要を創出し、路線の黒字化を数年かけて行うことは常套手段です。
しかし、おさんぽバスのような地域内のコミュニティバスの場合、需要は基本的に人口と地域内の商業施設や駅頭の配置によって決まってしまいます。航空路線のような育てるという概念は適していません。
つまり、1年目の収益動向を精査し、仮に赤字で市税の投入が重い場合には、撤退をすべきである可能性が高いかもしれません。
上記の仮の計算ですと市のベイシティ交通に対する補助金は年間約3,500万円となり、人世帯(4人家族)あたりの年間負担は約800円となります。
じゅんかい線の路線案に対するパブリックコメント募集はこれまでになく多くのコメントが寄せられました。その内容とそれに対する回答はホームページに開示されていますが、それを見ていると新路線に対する市民のニーズは、今のじゅんかい線とは違うところにあったのかもしれない可能性も見えてきます。
④これからすべき対策
事前に周到な事業計画と準備を、とは言いますが、やはり最後はやってみないと分からないものです。
その意味でこれだけ大規模な路線を作った、というチャレンジは良かったのかもしれません。
しかし、もし仮に現時点での運行収支が赤字であったとするならば、来年度には黒字化が見える新しい路線に変更を検討しても良いかもしれません。
ヤオコーが入るスターツショッピングセンターもできるので、政治としての責務はこれまでで十分果たしたものと言えます。さらにスターツショッピングセンターをカバーするベイシティバス新路線も想定されることから、じゅんかい線のあり方は議論があって良いかと思います。
買ってしまったバス車両の活用として今やるべきことは、本当の市民ニーズに応えた公共バス路線を作ることなのではないでしょうか。
なお、高齢者の方々には半年で2万円で京成バスが乗り放題といったようなパスもありますし、浦安市独自にタクシー補助を出しても良いかもしれません。バスの経費補填に比べれば微々たるものでしょう。
購入してしまったバスの活用としては、例えば、シンボルロードを総合公園〜浦安駅までベイシティバスよりも早く自家用車並みの早さで速達でき、多頻度運行されているBRT運用に、じゅんかい線の車両を転用しても良いかもしれません。
そして今のじゅんかい線は本当に必要な区間だけに絞る、又は撤退しても良いかもしれません。
パブリックコメントで寄せられた市民の声に、答えはあるかもしれません。
いずれにしても、じゅんかい線の路線収支を毎月必ず定期的にレビューし、今から来年度に向けた戦略を練ることが肝要ではないかと、空席の多いじゅんかい線のバスを見ながら思うこの頃です。
(もう浦安市さんのことですから諸々、多方面からの検討に着手されていることとは思いますが)