マーケティングの進化
マーケティングという概念は製品管理、顧客管理、ブランド管理を軸に発達してきました。
1950年代に製品を中心とした管理方法という概念でマーケティングという考え方は生まれました。当初はあくまで製品中心の考え方でした。
しかし、製品に人があわせる時代は徐々に時代遅れとなり、1980年頃に顧客を中心に据えたマーケティングの考え方に進化します。それがさらに進化をして1990年代にはブランド管理という考え方が新たに加わることになりました。
マーケティングという考え方が今でもこれだけパワフルなのは、このように世の中の動き、技術革新にあわせて常に進化を続けてきたからだといえます。
有名なマーケティングミックスという概念は1950年に生まれました。そして1960年にジェローム・マッカーシーが4Pという枠組みを生み出しました。それが現代まで、世の中の動きにあわせてアメーバのように変化を遂げ、社会のニーズに対応し続けてきました。
マーケティング論の誕生
1950年代は経済の主体は製造業であり、需要は継続的な拡大傾向でした。そのためマーケティングといえば、製品と言う軸に力点が置かれて設計され、そのコンセプトは考えられていました。当時はマーケティングは財務や人事とともに生産機能の1つを担うものに過ぎないものでした。
マッカーシーの4Pは、Product:製品の開発、Price: 価格の決定、Promotion:プロモーション方法、Place:流通経路、について検討すると言う単純な切り口でした。これはひとえに経済が右肩上がりであり、需要も拡大している状況下においては、そのような方向性を決めれば、大きく外す事はなかったからです。
マーケティング・コンセプトの進化
しかし1970年代に入ると経済が停滞しました。そうなると当時想定されていた右肩上がりの需要が実現できなくなり、4Pと言う概念だけではマーケットで戦うことができなくなっていきました。その結果限られたマーケットからの需要を奪い合う必要性が出てきました。
マーケターたちはこのような環境の中で自らを差別化するためのさらに深い洞察が必要となっていきました。
そこでそれまでの4品に加え新の5つのP、すなわち、
people:人
process:プロセス
physical evidence:物的証拠
public opinion:世論
political power :政治力
が新たに加えられました。
景気の低迷をきっかけとして、マーケティングについて深い洞察を持たねば企業は生き残れないことをマーケターたちは悟りました。景気低迷のおかげで、逆にマーケティングは経営戦略の根幹をなす重要なポジションを手に入れることとなりました。
その後、限られた需要の中で製品を売り込んでいくために、マーケティングはそれまでの製品に注目した活動から、顧客を中心に考える活動にマーケティングの主眼は移っていきましまた。
顧客中心のマーケティングへの進化
顧客を中心に物事を考えるようになったマーケターは、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングすなわち「STP」を含む顧客管理の考え方を中心に考えるようになりました。これ以降4PよりもむしろSTPを考えることにマーケターは意識を注ぐことになります。これが近代マーケティングの始まりです。
その後は情報技術の発達が加速し、社会に新しい潮流を作り出しました。すさまじい量の情報が世界中を流れ、人々はその情報の中から自ら取捨選択をするようになります。特にSNSの発達はマーケターたちにも大きな影響与えました。かつては一方的な情報提供で自社の商品サービスの魅力を消費者に訴えることができましたが、今ではフィードバックが消費者側から行われ、コントロールすることはもはや難しくなっています。そうした中でマーケターたちが最も意識するようになったものが「ブランド」です。ブランドを構築することは、長い時間と労力を要するものですが、一旦ブランドを構築してしまえば、ちょっとやそっとでは顧客は他社に行く事はなくなります。
いかに自社を高いブランド力を持つ企業として認めてもらうか、そのためのありとあらゆる努力が行われるようになりました。
ブランド価値が究極まで高まると、ブランドはもはやその会社のものではなくなります。
例えばIKEAがかつて自社のロゴを変更したことがあります。単に特殊なフォントから一般的なフォントに社名ロゴを変更しただけである。しかしこれに顧客が怒ったのです。顧客の怒りは一瞬にしてSNSで広まり企業側がもとに戻すという対応をせざるをえませんでした。コカ・コーラでもニューコークの販売時に同じようなことが起きました。コカ・コーラはもはや企業のものではなく、アメリカ人の人生そのものとなっていたのです。
マーケティングの目的、主眼は時代とともに進化をし続けています。これからの時代のマーケティングは、企業、供給者側が単独で考えるものではなく消費者と共に考え、協働していく方向に向かっています。マーケティング担当者は自社のブランドが消費者の心に根付いたものになるまで、その価値を高め続けなければなりません。それが近代マーケティングにおけるマーケターたちのミッションといえます。
浦安市のマーケティングの在り方について
シティープロモーションという動画配信、ウェブ配信を浦安市では取り組みました。総額1億円以上をかけたプロジェクトです。
これはマーケティング活動ではあるものの、一方通行のコミュニケーションでしかありません。このプロジェクトに決定的にかけている概念は、顧客との協働という視点です。
浦安市にとっての顧客とはだれか?
単純に現在の市民だけではないと考えられます。これから浦安に住む可能性がある方々、たまたまディズニー来訪がきっかけで浦安に宿泊・滞在していただいた方々、そういった浦安に関心をもって今この街に接して頂いている人たち全員が顧客です。
今のシティープロモーションでは1950年代のマーケティング活動のレベルに収まってしまっています。これを21世紀型のマーケティング手法に昇華させなければ、今浦安市が目指していることは本質的には実現できないのではないでしょうか。
市民と共に作る浦安市、市民と共に作る浦安ブランド、来訪客とともに見つける浦安の魅力、その協働の仕組みを作ることが必要で、浦安をアジア屈指のリゾートシティとするためには、専門的な知識と経験を持ったマーケターを採用するなり、市民から募るなりをすべきではないでしょうか。浦安市には素晴らしいノウハウを持った市民の方々がたくさんいます。
官民連携とは行政と市民の連携チームを作ってプロジェクトに取り組むような新しいやり方があっても良いのではないかと思います。