人はどうして怒るのでしょうか。様々な接客サービスの場面でサービスマンに対し、憤りの感情を露わにしているお客さまを見かけます。
人には承認欲求があります。認められたい、軽んじられたくない、 自分が軽んじられている=尊重されていない、と感じたときに怒るようです。
機内で見かけるシーンについて
冗談のようで、結構よくある機内のシーンです。
ある中年の日本人ビジネスマンがいます。海外から日本への帰国の機内です。
機内食には選択肢があります。通常は和食と洋食、です。
久しぶりに和食が食べたいと期待しています。
しかし、ちょうど自分の手前で和食がなくなっているような不吉な予感。
案の定、少したつと乗務員が、眉を寄せながら、腰を低くして近づいてきます。
乗務員「・・・お客さま、大変申し訳ないのですが・・」
中年「 ああやっぱり・・」
和食の夢が破れたことを把握し、がっかりします。
中年 「でもどうして??自分の一列前はOKで自分はダメなのか?」
反対側に目を向けると同じ列の人は和食のオーダーが通ったのが見えます。
中年「どうして自分だけ食事を選べない状態を強いられているのか・・。自分はこのエアラインをたくさん利用しているなのになぜ・・?」
そして、口からでた言葉は
中年「じゃ、何もいらない!」
プチ・ハンガーストライキです。目の前の乗務員の顔が一気に青ざめます。
そしてもう引っ込みがつかなくなり、続けて出てきた言葉は、
中年「飲み物もいらない!」
こうして散々駄々をこねた結果、乗務員はファーストクラスから取り寄せた素材でこしらえた和食定食を作り提供しました。
しかしながら、和食と引き換えに、その中年のお客さまも10数時間のフライトがずっと嫌な思いをしながら過ごす羽目になってしまうことになりました。
こうなると誰も幸せではないですね。
WIN=WINの真逆で、Lose=Loseですね。
人は、自分が相手に如何に大切にされているということがわかりさえすれば怒ることもないのではないかなと考えます。
そのためには通常、プロの客室乗務員はいろいろと工夫を凝らしています。
プロの客室乗務員のワザ
機内という限られた搭載スペースである以上、飛行機ではお食事オーダーは全員ご希望通りということはまずありません。だからこそ先を見越しえて先手を打てるのが、プロの接客者です。
本物のプロの接客者は、お断りが発生しそうな方とは、しっかり人間関係をそれまでに作っておきます。
自分とそのお客さまとの事前のコミュニケーションを通じて、人間関係を築きます。内容は何でもOKです。
どこに行ってきたのか?その旅はどうだったのか?
通り一辺倒の挨拶ではなく、人対人であることを感じられる会話をし、人対人の関係性を構築することが必要です。
お客さまと対人間としての関係を構築し、人として尊重していることを事前にお伝えすることがちゃんとできていれば、少々のことでお客さまは怒ることなどありません。短い時間の中で平等感を壊すことなく、お客さまと人間関係を築くことは高度なヒューマンスキルを求められます。
しかし、これができるからこそ、「接客のプロフェッショナル」です。
機内で時々乗務員が、お客さまに対してお食事のオーダー変更のお願いにあがることがあります。
その時は、乗務員の目には、このお客さまはきっとこの状況をわかってくれる、優しい方なんだ、と映っていることでしょう。
こういったノウハウやスキルは数字には現れませんが、ビジネスや人間関係において大変重要なスキルになってくると思います。