昨今の全国各地での水害発生を見るととても不安になる方々も多いと思います。浦安でも、大雨の影響で、舞浜交差点が水没したりしています。

短時間に急激に降る雨の逃げ場を地表面以下に作らなければ、このような水没エリアはさらに拡大する可能性があります。

浦安市でも公共設備地下に貯水槽を作る取り組みを行っていますが、もはやそれでは太刀打ちできないスコールが降るような気候区分に日本はなっています。

市長も県議時代から急務と最大の注意を払われている浦安市の水害対策は、ここ数年はさらにそのリスクが大幅に高まっています。

 

浦安市の水害対策

浦安市では以下のように排水設備計画を立てています。

市では以前は50mm/時の雨への対応として、 昭和 50 年に国から下水道事業の認可を取得し整備を進めてきました。当時は現在に比べまだまだ未開発地が多く、そんなに下水管への雨水流入はなく、それを前提に雨水管やポンプ場の規模を計算してきました。

その後都市開発が進んだため、浦安市では新たに 60mm/時の雨に対応できるように計画を推進しています。

出所:浦安市

時間60ミリの雨が長期に降るだけで、当時の試算だと800億円の損害が出るということで浦安市でも水害対策を進めていらっしゃいます。

さて、その前提が時間65ミリ前後の想定なのですが、昨今の日本ではどのような雨が降っているのでしょうか?

関東地方での豪雨の現実

2017年頃より、以前には想定できなかったような大雨が関東でも発生しています。台風や大気の状態が不安定になった影響で、非常に激しい雨が降りました。

各地でマンホールから水柱が立ち、道路が冠水し車が水に漬かってしまいました。車はタイヤの半分以上が水に浸かるとエンジン内に水が入り、もはや廃車せざるを得ない状況になります。

出社: 気象庁

このようにこの数年間で関東地方の豪雨ももはや東南アジアのジャングルのスコールのような激しさを持つようになり、身を以て地球温暖化の影響を感じます。

そうなると、この浦安市の時間60〜70ミリ程度の処理力では全く歯が立たず、上記の試算からすれば数百億円〜1000億を超える市内の財産に被害が出ることになります。

特に元町や中町を中心に被害が出る可能性が懸念されます。

これまでの延長線で水害対策を考えていても、もはや太刀打ちできなくなっているのではないかととても不安を感じるこの頃です。

そこで、私達浦安市にとって参考になる対策が、熱帯モンスーン気候でスコールも多いマレーシア・クアラルンプールにある世界初導入の「スマートトンネル」という新しい複合インフラ整備です。

 

交通渋滞と水害対策を一気に解決し、収入も得ることができる「スマートトンネル」

その世界初のスマートトンネルはマレーシアの首都クアラルンプールにあります。

クアラルンプールを襲うゲリラ豪雨に対し、彼らは新たな手段を講じました。それが「スマートトンネル」です。

出所:visual news.com  ウェブサイト

洪水が発生したときにその水を排水することができるトンネルを作り上げました。

このスマートトンネルは、都市機能を停止させる急激なゲリラ豪雨による多額の市内の損害を防ぎ、加えて平常時には交通渋滞対策となる有料道路として活躍するのです。

トンネルの直径は13.2メートル、全長9.7キロメートルの3階層の構造となっています。

出所:visual news.com ウェブサイト

暴風雨がない通常の条件下では、水はシステムに流されません。

嵐がひどくなり、第2モードが起動されると、水は高速道路トンネルの下の水用トンネルに流されていきます。高速道路セクションはまだこの段階では通常使用されています。

そして、更なる暴風雨により、3つ目のモードが作動すると、高速道路は閉鎖され、貯水槽としての機能を発揮することになります。

すべての車両が高速道路から出たことを確認した後に、自動水密ゲートが開かれ、高速道路トンネル内にも水が流し込まれ、溢れる豪雨の雨水の貯水槽としての機能を果たします。

出所:visual news.com ウェブサイト

そしてこの洪水が終了した後、トンネルは圧力洗浄で清掃され、高速道路は閉鎖から48時間以内に再び開通させることができます。

トンネルのすごいところは、日本では単なる地下貯水槽として建設されているインフラを、通常時では交通渋滞の酷い市内交通の緩和に役にもたっているということです。

2003年にプロジェクトが始まり2010年には完全に完成しました。総工費は約600億円ほどでした。

このスマートトンネルの完成により、大規模な洪水がすでに防止することができ、クアラルンプールの経済発展を大きく支えることになりました。

さて、この発想を浦安にあてはめてみます。

浦安市もスマートトンネルのような大規模な防災施設が必要な気候に

いま浦安市を通る湾岸線はすでに千葉方面に向かって常に渋滞しており、特にイケアやららぽーと需要も重なり大きな社会損失となっています。舞浜立体は建設が進められていますが、一番のボトルネックは三番瀬北側の湾岸線でしょう。

参考記事:357号湾岸線・舞浜立体交差の工事状況

いま千葉幕張では超高層マンションを複数、検見川浜でも大型分譲マンションが建設されており、また、オリンピック会場や様々なイベント会場として千葉市幕張はメキメキと都市としての実力をあげています。

こうなるとますます湾岸線の需要は高まり、さらに外環道ができることで浦安からの千葉方面への移動も大きく流れが変わるでしょう。

そうなるとこの三番瀬北側の湾岸線の渋滞問題は、かなり大きな社会問題に近いうちになる可能性があります。

第二湾岸線は交通の観点ではなくてはならない道路になってきています。

一方で三番瀬を埋め立てる当初の計画は白紙撤回され、三番瀬の環境保全は大切なミッションです。

そうなると残された方法はただ1つ、海底トンネルしかありません。

海底トンネルには相応のコストがかかりますので、単なる交通としての意味合いだけではなかなか意思決定は難しいかもしれません。

しかし、浦安市鉄鋼団地付近から千葉市幕張をもし有料道路「スマートトンネル」として結ぶことができれば、複数のメリットを享受することができます。

① 湾岸線の船橋付近渋滞の劇的な緩和

② 有料道路収入による建設費の償還(特措法対応)。また関係各市と国、県の水害対策の予算を共同事業として共有することでファイナンスをより確実なものとする

③ スマートトンネルとして、浦安市、千葉市での内水氾濫の水の貯水槽とし、大規模水害の発生を防ぐ。境川河口に水門を作り、元町、中町であふれた水も境川経由でこのスマートトンネルに流し込むことで水害を抑え込む。

④ 地下トンネルとすることで三番瀬の環境や周辺住民の交通には影響のないようにする

マレーシアのスマートトンネルは2017年の春に当時の皇太子様もご視察されています。日本でも現地でもニュースになりました。

是非日本初のスマートトンネルを、水害リスクを抱える浦安市の喫緊の課題として、国=県=浦安市連携で実現に向けた協議を推進してはどうかと思います。

実際の水害の被害額は、数千億円から兆円単位です。この損害を防げるのであれば、実は非常に合理的なインフラ整備投資であるといえます。

併せて高潮対策も急務であることが昨今の関西台風の被害で露わになった

あわせて、関西の台風被害を考えると、他人事とは思えないことが分かります。

三番瀬側の護岸は満潮時で4メートルくらい(目測)です。一方今回台風の高潮が超えてしまった芦屋の護岸は高さ5メートルと報道されています。

これらを踏まえると三番瀬や、まだ改修が終わっていない護岸が残る明海や高洲の護岸はもう2メートルほどのかさ上げが必要ではないでしょうか。

護岸管理者は千葉県ですが、市の所有である公園内の敷地を使って、市の独自事業として防潮対策事業を推進することも本気で検討すべき気候に日本は変わってしまったことを強く意識する必要があると思います。

↑三番瀬の護岸高さは満潮時は4メートル程度(目測)

↑海側の戸建ての一部が浸水した芦屋の護岸は5.2メートルとの報道

護岸による景観への影響を心配される方もいるかもしれませんが、神戸では以下のような画期的な防潮堤がつくられています。浦安市でも参考になるのではないでしょうか。

(以下、神戸新聞より)

津波や高潮の被害を防ぐ防潮堤にアクリルガラスを取り入れる取り組みが各地で広がっている。元々は神戸で始まり、東日本大震災後、巨大なコンクリート壁に囲まれて過ごす被災者から「海が見たい」という切実な願いを受けて防潮堤に「窓」を設ける自治体が続出。関係者は「観光資源としても活用していきたい」とPRしている。使用するアクリルガラスは水族館などの水槽に使う技術を応用。高強度ガラスの厚みを増し、津波や高潮にも耐えられるようになった。


ガラス付き防潮堤、発祥の地は神戸市だった。2008年に中突堤と神戸ハーバーランドの防潮堤(高さ約1・5メートル)に、縦1・2メートル、横最大2・5メートルのアクリルガラスを計33枚設置したのが、全国で導入1例目。費用は若干割高となったが、神戸市は「防災と景観の折り合いをつけるための判断。観光客らに美しいミナト神戸の風景を楽しんでほしかった」と説明する。

人命がかかる災害リスクが日に日に高まることを見過ごすことは避けなければなりません。