金融やM&Aに馴染みのある方には釈迦に説法なので読み飛ばしてください。

今回は、投資対象物が持つ本来の価値はどのように知ることができるのか、その基本概念についてご紹介します。




企業や投資対象資産のお値段のことを「企業価値」や「資産価値」と呼びます。そしてそのお値段を算出・算定することを

「バリュエーション」

と呼んでいます。

企業の価値には大きく2つの価値があります。

これは企業は必ず元手となる資金があって事業を行っているわけで、この資金の出し手が2つあるからです。

①一つ目の資金の出し手=株主

②2つ目の資金の出し手=債権者(お金を貸している人)

したがって、企業は誰のものなのか?という問いに対しては、

ファイナンス理論上はしっかりと借りたお金(負債)を返した場合は①のみ、株主のもの、まだ負債が残っている場合は株主および負債を貸している債権者のもの、ということになります。

そして、もう一つのルールは、株主の価値よりも債権者の価値が優先される、ということです。これは株主に配当を行う前に、まず利子と負債を返すことが優先されることにも表れています。

したがって、

企業の価値(会社総価値)=①株主に帰属する価値(株主価値)+②債権者に帰属する価値(負債価値)

と整理されます。

これが大きな概念としての会社・企業の価値です。

「ハゲタカ」というドラマが以前はやりましたが、彼らの利益がどこからくるのかというと、

例えば会社全体の価値が100であったとして、負債がそのとき20あったとします。するとこの時の株主の価値=自分たちの財産は80です。

利益を生んでいない資産を売却したり、合理化により負債を返済して無借金になったとすると、自分たちの持つ株主価値は100-0=100となり、20の利益を生み出しているということになります。

本当はLBO(leveraged buy-out)という手法を使い、もっと利益を高めます。

このような手法を使って企業再生は行われ、苦しい会社に投資をしても利益を確保できるような仕組みが編み出されました。

これが社会にとって良いのか悪いのか、それは別の問題なのでここではやめておきますが、少なくともこういったメカニズムを知っておくことは重要ではなかろうかとおもいます。

理論的には対して難しい話ではないですが、実際はDCFで会社総価値を求める時に割引率を少しいじるだけで大きく値が変わるので、バリュエーションハ はアートだ、などと良く言われています。

会社のお値段算定はアート(芸術)のようなもの

会社のお値段の計算法、これを「バリュエーション」と呼びます。以前こちらのコラムで書きました通り、会社の価値算定は一つの値にカチッと決まるものではありません。

バリュエーションにはいくつかの手法がありますが、基本的なものとしては以下のようなものがあります

・類似会社比較法

・類似案件比較法

・DCF法

これらの手法の特徴、メリット・デメリットを簡単にご紹介すると以下のようになります。

説明文が専門的で少しわかりづらいかと思います。このサイトの目標は初めての人でも大枠をご理解頂ける情報をご提供することですので、この3つについてはそれぞれ丁寧にご説明したいと思います。

今回は、バリュエーション手法の中で最も有名なDCF法、すなわちDiscounted Cash Flow法についてご紹介をしたいと思います。

DFC法について

まずDCF法の計算方法に入る前に、何がDiscounted(割引)なのか?についてご説明します。

今日の100円と1年後の100円

皆さんは今日もらえる100円と1年後にもらえる100円、どちらを選びますか?

私はぜったいに今日もらえる100円です。同じ100円でも、時間の概念を入れると価値が変わるからです。

なぜかというと、今日100円もらって金利1%で銀行に預ければ、1年後には101円になります。

したがって、金利が1%であるならば、1年後の101円と今日の100円が同じ価値であると言えます。

よって、将来もらえるお金の価値を現在もらえるとしたらいくらなの?と割り引いて考える考え方をDiscounted Cash Flowといいます。

上記の例でいえば、1年後の101円の現在の価値(これを「現在価値」といいます)は、

101円 ÷ (100%+1%(金利))= 100円

となるわけです。

Discounted Cash Flowを使った企業価値の計算

DCF法は、対象となる会社が将来生み出すであろうキャッシュフローを、上記の方法で現在の価値に割り戻して、すべて足したものである、という考え方です。

よって実務では財務予測モデルを作成し、毎年のキャッシュフローを予測したうえで、それを現在の価値に割り戻してすべて足すことによって、企業の価値を算出します。

ちなみに、これで出てきた価値というのが、「会社総価値」に該当します。

「会社総価値」と「株主価値」・「負債価値」については明確に区別しなければなりません。これは非常に重要なことです。

株主に帰属する「株主価値」を求めたいのであれば、DCFで出てきた金額=「会社総価値」から、負債(正確には負債-保有現金。これを「純負債」という。)の額を引いて算出する必要があります。

なお、実務では財務予測は通常5年程度としており、5年後以降のキャッシュフローの価値については、数学でいう「無限までの積分」方法を使って算出します。割引があるので必ずすべて足しても無限とはならずある一つの値に収束します。

これを「ターミナルバリュー(TV)」といいます。

DCFで企業価値を算出するときはこのTVを入れて考えなければ、会社の価値のすべてを表しているとは言えません。

このTVを求める方法には2種類あり「永久成長率法」と「倍率法」があります。この部分は多少数学的になってしまいますのでまたの機会のご説明としたいと思います。

DCFを使う上で大切なこと

DCFでは実際計算をしてみるとすぐにわかるのですが、WACC(資本コスト。会社が資金を調達するのに必要なコストのこと。銀行から借りるだけならばこの資本コストは金利となります)と呼ばれる割引率を少し変化させるだけで簡単に億単位で計算結果が変わります。

よって、なんとなくの幅を掴むために使う、というのが正解です。

DCFでxxx億円だから、これでしか売らない・買わない、などと交渉をしていたら、永遠に交渉はまとまりません。

ほかのバリュエーション手法も総合的に活用しながら、自分たちの出せる金額・売りたい金額が、このDCFのレンジの中に入っているかどうか確かめる、といった使い方が実務におけるDCFの使い方です。

バリュー投資で言えば、DCFで求めた価値が、今の株価よりも遥かに高い場合は、潜在的な価値がある!と判断して、バフェットさんのように大きくポジションを持ってみる、といった使い方です。