お客さまや観光客がなぜ不満を感じるのかについて、その心理メカニズムについて考えたいと思います。



サービス業の現場でお客さまのご意見、お叱りを統計的に見ていると、その理由は多岐にわたるも、不満の発生理由は大きく分けて2つに収斂して行くように思います。

不満の理由その①:期待値に満たない

ニューヨークの地下鉄で5分待たされてもおそらくほとんどの人はイライラはせず、地下鉄を待っているます。
一方で東京の地下鉄で9:34分に来ると電光掲示板に記載されている列車が9:39分になっても到着しなければお客さまはかなりイライラするでしょう。

同じ5分の待ち時間なのに、なぜこんなに不満度が違うのか? その原因が

「期待値と現実のギャップ」

です。
ニューヨークの地下鉄ではそもそもダイヤもなく、到着時間案内もなし。遅れることもしょっちゅうです。つまり、多少の遅れがあること、待たされることは乗客側も織り込み済、想定の範囲内ということです。よって5分待たされることなど、大したことではないということです。

一方で東京の地下鉄は原則常時オンタイム、遅れることはまずありません。そのため、たかが5分の遅れでも、東京の乗客にとってみればすさまじい遅れと捉えられてしまうことになります。

要はお客さまの頭の中の期待値が高ければ高いほど、そこからのずれによってお客さまは不満をひどく感じてしまうという現実があり、この期待値をどうコントロールするのかがサービス提供側の使命だといえます。

ボーイングは新型機の発売の際は、大抵は実績値よりも5%くらい低めに燃費について説明します。これにより顧客は「期待以上の性能」と高い評価を与え、ボーイング製品に対するロイヤリティを高めることに繋がるわけです。



不満の理由その②:サービスにばらつきがある

国際線のサービス現場において、顧客心理について良い題材となる事例があります。

・行きの便は空きが沢山あったので特別にビジネスクラスにアップグレードを行い、帰りは空きがあってもエコノミーのままにしたケース。

・行きの便だけ機内で特別扱いして、帰りはいつも通りのサービスを行われたケース。

・自分より前のほうに座っているVIPのような人にはかなりきめ細やかなサービスを行っていたのに、自分を含むその他の乗客にはいつも通りの普通のサービス。例えば特定の人だけに挨拶しているのに、他の人は挨拶がない

・ハワイ線で特定のカップルにはハネムーンのお祝いケーキがあるのに、他のハネムーン客には何もない(たまたま空港でその特定の人がハネムーンという情報が入ったから)

これらのすべてのケースにおいてその当事者であったとしたら、満足と不満のどちらが最後に心に残るのでしょう。

上記のケースでは、親切をしたつもりなのに、おそらく顧客の心には不満が残っているかと思います。もしくは特定のサービスを受けた人は嬉しくても、その周りの10倍の人には不満が生まれるはずです。
ある瞬間だけ、ある人にだけ、特別なハイクオリティのサービスを提供して、その直後にもとのサービスに戻した場合、他の人はノーマルサービスの場合、本来はそのサービスがふつうであったにも関わらず、大きな不満が起きてしまうことがあります。

期待値が上がったぶんだけ、元のサービスレベルに戻ると大きな不満になってしまうのです。

飛行機の例でいえば、行きの便だけ高いクオリティを特別に提供し、帰りの便は普通だとしても大きな不満になってしまうということです。

日本発の便はご飯も美味しいし、乗務員も疲れていないのですが、帰りの便は外国のケータリングなのであまり美味しくないですし、乗務員も時差で疲れています。

帰りの方がサービスは劣化しやすい状況にあります。

場合によっては敢えてサービスレベルの高い方を、低い方に合わせるという工夫も必要かもしれません。

すべての瞬間において同じクオリティのサービスを提供できないのであれば、特別なサービスはむしろすべきではない、ということになります。

それでもどうしても特別に何かを行いたいというのであれば、「今回だけ特別ですよ!ほかの人には内緒ですよ!」と十分に説明したうえで実施する必要があります。

本来はプラスの気持ちから行うスペシャル付加サービスも、連続的なサービスの流れ中ではバラツキととらえられてしまうとマイナス要素になりえると考えています。

顧客満足の維持のためには、むしろ一時的な瞬間最大風速のサービスはNGであり、すべてのタッチポイントにおいて均質にサービス品質の底上げを行う必要があるということかと思います。



上記の事例から浦安について考える

浦安市内の出来事に対して浦安のシティプロモーションや都市としての価値向上のためにも上記のような発想は重要かもしれません。

例えば3月末より内田新市長が誕生したわけですが、いきなり市長が変わって行政サービスが悪化してしまうと、市民の不満は一気に高まります。

例えば浦安市だけのスペシャルサービスで他の市にはない過剰サービスだったとしても、市民の大多数が使っていて満足している行政サービスだったとしたら、削られてしまうと大きな不満になってしまぃす。

内田新市長は「継続と刷新」を掲げられていますが、市民の多くが利用し、満足しているサービスについては継続が必要かと思います。

一方で、一部の人だけにベネフィットがあり、特別扱いするような行政サービスは、ベネフィットを受けない多くの市民の不満につながります。そういうものは市民全体最適を考え、廃止も含めた刷新が必要かと思います。

浦安市内の市民の満足度の全体最適を考えたうえでの、浦安新市長の「継続と刷新」内容の発表が待ち遠しいですね。