レストランでも、飛行機内における接客でもそうですが、かならず顧客満足、CSと接客・おもてなしの考え方について話し合いをしていれば必ず議論になるのが、「接客は丁寧がよいのか?」それとも、「早く効率よくサービスを進めるほうがよいのか?」という議論です。



それを考える上で、まず世界トップクラスと言われるディズニーの顧客満足、ホスピタリティに対するアプローチについて考えたいと思います。

ディズニーの顧客満足要素への優先順位

ディズニーではこの、「接客は丁寧がよいのか?」それとも、「早く効率よくサービスを進めるほうがよいのか?」という問いに対しては明確に方針を出しています。

何か判断に困った時に、現場が決して迷うことが無いように、アルバイトも含めて、たった一つのシンプルな方針をディズニーは定めています。

それは「SCSE」と呼ばれるものです。

S: Safety 安全性

C: Courtesy 丁寧さ

S: Show ショー(楽しませるおもてなしの気持ち、といったところでしょうか)

E: Efficiengy 効率性(これが効率よくお客さまをさばく、という部分です)

これらがディズニーのサービス品質を支える4本柱とされています。

そして、欲張りな企業は通常は全てを並列にして、社員に対して「全部がんばれ、全部重要」というのですが、ディズニーではちゃんと現実を見据え、ここに優先順位をつけています。迷ったらSCSEの順にやればよし、それがディズニーの哲学です。

例えばスペースマウンテンにすさまじい数のお客さまが並び、待ち時間がどんどん伸びたとします。

しかし、ここで安全確認を手抜きして早く回して、待ち時間を短縮することはディズニーではNGなのです。

安全あってのエンターテイメント、これはすんなり理解できます。

ではこれを踏まえて、次に日本航空の機内サービスについて考えてみます。



日本航空での機内サービス改革事例

以前のビジネスクラスの食事サービスは2時間半以上サービスの時間が当たり前のようにかかっていました。

これは盛り付けによるプレゼンテーションや一人一人に丁寧に接客することを良しとする設計としていたために、全体のサービス時間はえらい長くかかる、という事態が発生していたのです。これは上記のディズニーと同じ考え方なのかもしれません。

しかし、お客さま満足度調査ではこの食事サービスの満足度は対して高くはありませんでした。なぜでしょう。

それはあまりにも待たされている感が強すぎて、美味しく、きれいな盛り付けの食事(=機能価値)がすべて台無しになってしまっていたからです。

考えてみれば当たり前ですが、飛行機では映画を見るくらいしかやることがなく、食事になるとテーブルを出すので自由に動けず、ある意味手錠をはめられたような状態です。そんな中で2時間半もかけてアミューズ、前菜、メイン、デザート程度のコース料理ではイライラが募ることは自明です。

つまり優先順位を間違えていたのだといえます。

ディズニーではSCSEで良くても、機内という特殊な空間では「E」のほうが重要であったということです。

この現実を見てJALではスペシャルチームを組み、チーム全体でサービス設計を徹底的に見直し、少なくとも2時間は下回ることを目指しました。

そして、現場主導のチームはサービス設計の徹底見直しに着手しました。



サービス時間を短くするにはサービスを削るか、効率化するか、人を増やすしかありません。

サービスの改悪はすぐに客離れにつながります。それは絶対にやってはいけません。

人繰りも当時は厳しく、人を増やすなど夢の話でした。

やるべきことはただ一つ、効率化です。まず現状における機内での乗務員の1人1人の動きをデータ化し、どこに無駄があるのかを洗い出しました。

データ化することによりまず無駄な動きが発生しないようにサービスプロシージャを変えました。さらに短くするため、作業をオーバーラップさせて、後工程を先んじて開始する工夫も取り入れました。

そして、機内での人の努力だけでなく、地上側の支援も得るため、盛り付けも簡素化して効率よく出せるように地上で準備をして搭載してもらうことで、時間短縮を図りました。これらによりサービス時間は大幅に改善し、食事サービスの評価は一気に上がりました。時間は2時間半かかっていたものが、1時間45分くらいまで短縮することができました。

また同じ食事サービスでも、昼と夜ではニーズが違うため、サービスの設計を便の特性によって設計を変えるなど、きめ細かな設定変更を行いました。

例えば夜行便では食事などそもそも不要で寝たい、という人がたくさんいるわけで、ご搭乗時にその要望を聞き取る方式を導入したり、到着前の食事を可能な限り短くするなど、細かな配慮をマニュアルに落とし込みました。

こういった一つ一つのチーム一丸での努力の積み重ねにより機内サービスへの評価は向上し、結果としてJALはJCSI顧客満足調査で一番をとることにつながったのだと思います。

「接客は丁寧がよいのか?」それとも、「早く効率よくサービスを進めるほうがよいのか?」という問いに対しては、一義に決まるものではありません。

業種によっても違いますし、同じお店でもシチュエーションによって変わる、というのが私の見解です。

レストランを例にとれば、

・開業時はまだ認知度も低いので、来ていただいたすべてのお客さまに満足いただくために「丁寧な接客を心かける」

・その後人気が出て待ち時間が発生するようであれば、ある程度「回転率」を重視しないと不満が拡大する。特にランチタイムは。

といったように、ステージやシチュエーションによって顧客満足に影響を与えるファクターが変わると思います。

顧客満足にもっとも効く要素は何かを見極め、サービス設計を行うことこそがサービス企画者の責務です。

何か一つのファクターだけ(例えば丁寧な接客、きれいな盛り付けetc..)が顧客満足をコントロールするんだ、といった狭い視野に陥ってしまうと、正しい企画はできなくなり、顧客満足もむしろ下がってしまうと考えています。

事実を客観的に評価し、正しい数字と事実に基づいて、戦略設計を行うことが極めて重要だとこの活動を通じて感じます。

そして何より、改革の実現の為には現場と心を一つにして同じ目的の為に動けるかどうか、これが何より大切なことだと感じました。このサービス改革も誰かが1人でやっていたら、何も変わらなかったと思います。

現場の多くの人達が一つになって、現場で検証を繰り返し行い、いろんな方から提案をもらい、それを一つの新しいマニュアルに落とし込んだからこそ、高評価の新サービス創造に繋がったのだと思います。

マリナガーデン新浦安を中心に浦安に新しいお店がたくさん誕生します。地域とお店が協力し合い末長く共生するためにも、顧客満足度という視点はとても大切ではないかと思います。