新年を迎え、冬の寒さが厳しい時期になってきました。

そして2019年3月をもって、浦安の魚市場は閉鎖となります。魚市場といえば市民の台所としての機能に加え、観光活性化・地域活性化にも大きな役割を果たします。

今回は浦安魚市場閉鎖後に、浦安という海沿いの地域を活性化させるために浦安が真剣に取り組むべき施策について、他地域の事例を見ながら考えてみました。

 

他地域ベンチマーク: 北海道

北海道の南の玄関口・函館には、いつも外国人観光客で賑わう魚市場「函館朝市」があります。

朝市となっていますが、昼も午後も営業しています。

新鮮な魚介類が買える市場機能はもちろんのこと、場内には釣堀を設置して新鮮な魚介類を釣って食すことができるようなアトラクションを導入するお店もあります。

水槽の周りには長蛇の列になります。

所謂体験型の観光を提供し、口コミで集客力を高めているわけです。

北海道の東の玄関口・釧路には「フィッシャーマンズワーフ」と名付けられた施設があります。

「釧路フィッシャーマンズワーフMOO」は、釧路市にある複合商業施設で、名前はサンフランシスコのフィッシャーマンズワーフに由来し、MOOはMarine Our Oasisを表しているそうです。

5階建ての商業施設と、その横に温帯植物園が併設されています。かなり気合の入った強化な建物で、バブル時代の建造物そのものです。

1989年に西武の協力のもとで開業した本物件ですが、その後バブル崩壊の影響により本州資本の店舗が全て撤退しました。

しかし、その後の市が自らの行政施設を転居させたり、テナント誘致のための努力により2008年には再びテナント入居100%となります。 東関東大震災の津波の影響を受け、休業を余儀なくされましたが、1ヶ月後に完全復旧を果たしました。

現在のテナントは以下のような状態です。

空きスペースがあり大盛況とはいえないですが、過疎化の進む地方における巨大施設としては「健闘」というイメージでしょうか。

行政施設も入居させることで、稼働率を高めています。(良いか悪いかは議論がありますが・・)

建物の裏には川が流れ、美しい夜景が楽しむことができます。

この景色は実に素晴らしく、暖色系のランプ灯のような街灯の光が、川と橋を優しく包む様子が見る人の心を掴みます。

 

他地域ベンチマーク: 旧築地

築地の交差点はいつもたくさんの観光客で賑わっていました。アジアからの旅行者が8割、欧米が2割という印象です。

東京都では、施設規模や業務への影響、見学者の安全等を考慮しながら、マグロ卸売場における見学を一般開放しています。

築地の活動は真夜中から始まります。深夜2時頃にはトラックがたくさん着いて新鮮な食材が運び込まれています。

セリは朝の5時25分~50分までと5時50分~6時15分までの2回制ですが、120人という人数制限があるで3時半には着いているのが安全です。着いた順番に色付きのジャケットを渡されますので、それを着用して時間まで待つことになります。

フラッシュは禁止、手をあげたりセリの邪魔をしない、誘導員の指示に従う注意事項が書いてある紙が渡されます。実際の競りなので、当たり前ですね。

こういう日本のライブの生活の様子を見ることが外国人観光客にとってはとても貴重な体験になります。実際、見学者のほとんどが外国人です。

そして実際に行った北米からの友人達も、必ず他の来訪客に築地へ行った方が良いと推奨しています。

最近の訪日客のほとんどは、消費ではなく、「体験」を求めています。

そして、貴重な体験ができたアジアや欧米の人は自らの体験を発信し、次に来訪予定の人々は、何よりその口コミを意思決定の重要な判断材料にするそうです。

口コミで素晴らしさを伝えてもらえるような観光資源を、浦安内でも1つ1つきっちりと戦略的に作り上げていく必要があります。

また、築地には市場内及び場外に美味しいお寿司屋さんがたくさんあります。

こういう食の豊かさも観光活性化の上ではとても重要です。

 

他地域を参考に浦安観光活性化の在り方について考える

上記のようなリアルな日本体験を出来る、または間近で見られるような観光資源を浦安にも積極的に検討していかなければならないように感じます。

浦安にはすでにたくさんの良いお店があるので、ウェブやSNSをグローバルに活用した上手な情報発信と、口コミに載せるための戦略を考えていくことが必要です。

浦安魚市場の撤退後の代替施設は現在白紙の状態ですが、中長期的に浦安を発展させるには、来訪者向けの体験型のインフラも一緒に整え、浦安に多くの来訪客をお招きする観光資源の新設が必要かもしれません。

たとえば釧路の川にかかる橋は、夜の灯りに照らされとても美しかったのですが、よくよく見るとレトロなレンガ作りとかではなく、光とペイントの色で綺麗に見せる工夫をしていました。

浦安の境川の橋についても、気合いを入れて観光活用しようと思えば、この釧路に負けないくらい美しい夜景を演出することは可能だと思います。

近隣にこれだけホテルができている今、東京湾と境川と美しい橋を、浦安の観光スポット化する努力をしても無駄にはならないでしょう。

 

境川河口を浦安活性化に活用したい

境川河口に、浦安魚市場の代替となるような集客力の高い商業施設を設置しようというプランが、かねてより沢山の市内関係者によって議論されてきました。

しかし商業施設の経営というものは簡単ではありません。

テーマパーク経営とも類似性がありますが、箱物ビジネスは中途半端なものを作ってしまうと、金ばかりがかかって、テナントが埋まらないという事態に陥ってしまいます。

そこで考えなければならないことは、この施設に単なる建物以外の付加価値をつけ、人を流し込む仕組みを作ることです。

その1つの解決策が、羽田や品川と結ぶ船便のターミナルとすること、そして元町、中町、新浦安、境川河口を結ぶ交通の設置です。

隣接する港湾施設部分に羽田、品川までの船便を設置するというプランは、かつて日経新聞にも載ったアイデアなので、ご存知の方も多いでしょう。

出所:日本経済新聞社2011年記事より

交通インフラを強化し、交流人口を増やしてなければ、バブルの建物のようにシャッター通りがもう一つできてしまうかもしれません。

街づくりはいくつものプロジェクトを同時進行で進めなければうまくは行きません。過去の私鉄民鉄は、阪急電鉄を皮切りに、まさにこのモデルで地域活性をしてきました。

浦安の最後の未開発地域である高洲の空き地は、浦安の中長期的発展に資する活用をしていただきたいものです。

老朽化した元町の魚市場の移転先として、例えば「フィッシャーマンズワーフ」というコンセプトで、この地で新たにより付加価値を高めた魚市場をつくり、さらにそこから船便が羽田や千葉、東京に出向し、さらには夜景ナイトサファリ船が出向するような活性化に活性できる有望な場所です。

森田知事の発言によると、千葉市の工場夜景を船から見る「ナイトサファリクルーズ」は89%もの搭乗率だったそうです。

浦安のディズニーを海から見るプランも大盛況になることは間違いありません。

高洲の三菱地所の低層マンションの道路側は商業地域として残されているようですから、ここにできるかもしれない商業施設との連携も図ることができます。

また、堅牢な五階建て程度の施設ができた場合には、災害(津波)時の避難場所や復興拠点としても大きな役割が期待できます。

釧路フィッシャーマンズワーフも、まさに津波の避難場所として機能しています。裏には三菱地所の低層マンションができるわけで、このような防災機能の強化も不可欠です。

上記の船ターミナルがあれば、災害後にも迅速に人と物資を運ぶインフラとすることができます。

まとめ

浦安魚市場の閉鎖、そして高洲という最後の開拓可能土地が残る現状に鑑みると、境川の河口を以下のように活用できないかと考えます。

境川河口に新・浦安魚市場の新設

堅牢な建物として平時にはレストランや買物の拠点として活用し、非常時には周辺住民の避難場所とする

境川河口水門の設置も同時に行う

元町、新浦安とのラピッドバス便を設置する

千葉市のように建物内に船のオペレーション現場を入居させて、羽田や東京と船便を開設

夜は浦安の夜景を見れるはナイトサファリクルーズを運航

災害時はこの波止場を物資や人の輸送拠点に活用

浦安は工夫と頭の高いようで、まだまだ発展できるポテンシャルを持つ街です。

浦安市を「成熟期」と位置付けてしまうのは時期尚早です。こんな大掛かりなことでなくても、公園へのPPPによる集客観光収益施設の導入など、まだまだやれることは沢山あるはずです。

今年の春には市議選、県議選が控えていますが、こうしたことを積極的に推進してくれるリーダーに、行政を担ってもらえたらと思います。